日本国内の痛み関連の学会(全日本鍼灸学会、日本運動器疼痛学会、日本口腔顔面痛学会、日本頭痛学会、日本線維筋痛症学会、日本疼痛学会、日本ペインクリニック学会、日本ペインリハビリテーション学会、日本慢性疼痛学会、日本腰痛学会)の代表と、慢性疼痛に関わる関係者を迎え、2021年に慢性疼痛診療ガイドラインが改定されました。
2018年のガイドラインでは、鍼灸に関する記載はなかったのですが、今回から加わりました。
鍼灸に関する記載について、説明します。
鍼灸治療と慢性疼痛
・慢性疼痛に対して鍼灸治療は有用である
・鍼灸を選択する際は、効果やコストを考え患者の価値観を優先することが望ましい。
・慢性疼痛に関する適切な知識がある鍼灸師が望ましい。
推奨度:弱く推奨する
解説
3ヶ月以上痛みが持続している患者を対象とし、疾患は特に絞らずに検討しました。比較対象は、薬物と鍼灸、薬物+通常ケアと鍼灸です。
海外の慢性疼痛を対象としたメタアナリシスでは,鍼治療が慢性疼痛治療に有効であるという信頼性の高いエビデンスが報告されています。
NICE(英国国立医療技術評価機構)が慢性疼痛を対象として鍼治療が通常ケアもしくは 偽鍼に比べて短期間(3ヶ月)での痛みの軽減および QOL (日常生活動作)の改善があるとして推奨しています。
また,ACP(米国内科学会)が慢性腰痛を対象として鍼治療を推奨しています。
片頭痛と緊張型頭痛
・鍼灸は慢性片頭痛の予防に有用かもしれません。
・慢性緊張型頭痛の予防効果は理学療法やリラクゼーションを上回るものではない.
推奨度:弱く推奨する
解説
慢性片頭痛に対する鍼灸の効果の検討は薬物との比較が 2 つあり、2 つとも鍼灸による有意な予防効果を認めました。
しかし、薬物に比べ、鍼灸のプラセボ(思い込み)効果はかなり高く、プラセボ効果により差が生じた可能性も考えられます。
慢性緊張型頭痛の予防効果は、鍼灸および 偽治療または理学療法やリラクゼーションともに、治療前と比べて痛みの強さは軽減しましたが、鍼灸と他の治療とで軽減効果に有意な差はなかった。
安全性についてはおおむね安全と考えられます。
肩こり
・鍼治療は、短期的な痛みおよび身体機能の改善効果が示されている。
・中期~長期的な効果は明確ではない
解説
比較対照の設定や量、期間など条件が一定ではないので、各治療法の有用性を比較することは難しくエビデンス(根拠)の確実性は低い。
参考文献:慢性疼痛診療ガイドライン 真興交易㈱医書出版部 2021